漆塗箱の制作工程
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東山堂で取り扱う漆塗箱は、次の工程で作られています。
上の画像、左から①木地→②布張り→③下塗→④中塗→⑤上塗
漆器づくりは分業制で、大まかに木地づくり、下塗、上塗の3工程に分かれます。木地づくりは、木地師さんに依頼します。大音師さんの所では、上記②③を息子さんが担当され、④⑤を4代目当主の健晴さんが担当されます。
天然の漆を使う漆器づくりでは、部分ごとに何度も塗分け、漆の乾燥にも時間が掛かるため、完成までに約4か月かかります。
①木地づくり
蓋(ふた) → 北海道産シナの合板です。板を合計5枚、木目を互い違いに重ねることで、反りづらく、割れづらい蓋になります。天然の一枚板は反るため、板を5枚を重ねることで、耐久性のある蓋を作ります。
身(み) → 青森県もしくは石川県産のヒバ材。蓋とともに、角を面取りすることで、手になじむようにし、角の欠けを防ぐようにします。
②布貼り
地の粉(珪藻土を焼いた粉)を塗り、補強のため角に木綿の布を貼ります。漆器は蕎麦せいろや寿司下駄に使われ、頻繁に洗浄するため、長持ちするよう、布張りされます。
東山堂の漆塗箱は、洗われることはあまりないかも知れませんが、長く使ってもらうため、角のみ布貼りにし、耐久性のある漆器にしました。
③下塗
漆、米のり、との粉(精製した土)を混ぜたものを、下地塗します。下地を塗った後は、表面を磨き、次に塗る漆との接着を良くします。
④中塗 ⑤上塗
<黒漆>
<朱漆>
中塗、上塗に使われる漆は、水分を少なくし、着色したものです。中塗りした時点では、器表面にはまだ艶はありません。上塗りすることで、美しい艶が生まれます。中塗、上塗の作業中は、ほこりが表面につかないよう、閉ざされた部屋で、作業者以外は立ち入ることができません。とても神経を使う作業だそうです。
器械風呂と呼ばれる乾燥室を紹介します。
ゆっくりと内部の軸が回転することで、角に漆が溜まることなく、表面が平らになるそうです。
漆というものは、水分がないところでは乾燥せず、水分が多くある状態で乾燥します。また、最後まで乾ききるには、50年ほど掛かるとも言われるそうです。とても不思議で、魅力的な素材です。
大音師さんに話をうかがうと、漆は毎日扱っていないと、乾き具合がつかめない、とのことでした。それぞれの漆の具合、季節、天候など様々な要素で乾燥は異なり、常に自然との対話が必要とうかがいました。
平らにきれいに塗ること、滑らかに磨くこと、そうした作業の技術だけでなく、長年の経験がとても大切な仕事です。